夏休みのある日。あたしは髪を染めた。
ほんとは綱吉みたいな栗色をイメージしていたんだけど、思い通りにはならなくて結局ほんのりオリーブ色の、まるでバジル君みたいな髪になった(別にバジル君と同じ色が嫌というわけじゃないけど)。
バジル君とは、少し前からあたしの幼馴染である沢田綱吉の家にホームステイしている外人さんだ。でも、日本語がとても上手だから尊敬しちゃう。…彼は時代劇が好きなのだろうか、そんな時代を感じさせる日本語ではあるけども。
暑くて暑くて、外に出るのもほんとは嫌だけど、あたしはアイスを買うためにコンビニへ行こうと家を出た。そしたら。
「…殿?」
噂をすればなんとやら。
後ろから、バジル君の声が聞こえた。振り返ると「ああ、やはり殿であったか」と彼は安堵したようだった。
「こんにちは、バジル君。今日も暑いね」
「そうですね。…あの、」
バジル君は何か言いたそうな様子であたしを見ていた。続く言葉をあたしは待っていたけれど、とうとう彼は何も言わなかった。
…ああ、そういうことか。
「髪を染めてみたの。どうかな」
殿の髪は美しいですね。拙者は、この色が好きです。
そう言われたのはいつのことだったか。
今、彼が言いたいことなんて、わかっている。けれど、彼は。
「とてもよく、お似合いですよ」
なんて、とても優しい彼が言ってくれることはわかりきっていた。
それでもなお、意地悪なことを尋ねてしまった私はとても卑怯な人間なのだろう。
パラドックス(それでも、やはり)