「ねえ獄寺」
 ガタガタ。イヤフォンをして音楽を聴き一人の世界に入っている獄寺の、机を乱暴に揺らしてこちら側の世界へと呼び戻す。邪魔すんなよ、と彼の目がそう言っているがそんなのはいつものことなので私はそれを無視した。ガタガタ。
「…んだよ」
「ペンケースが壊れた。直してよ」
「はあ? んなもん自分でやれ」
 可愛い可愛いうさぎちゃんがついたペンケース。そのジッパーの部分が壊れてしまったのだ。引っかかってるんだかよくわからないが噛み合っておらず、無理に引っ張ってあげくの果てには逆方向から裂けて口が開いているという。これはもう私には無理だ。
「急患なんです獄寺先生。今この子を助けられるのはあなたしかいないんですよ!」
「生憎だが今こっちの病院も手が空いてねーんだ、余所で診てもらえ」
 嗚呼、なんてかわいそうなうさぎちゃんなんでしょう!獄寺にも見捨てられてしまったなら、もうあなたを救える人はここにはいないのです!
「綱吉がね、獄寺君はすごい器用だからきっとすぐに直してくれるよって言ってた」
「・・・・・」
 最終手段、綱吉。獄寺はそれはもう綱吉に弱い。綱吉はダメツナって呼ばれてるけど、とっても優しい子だ。でもとっても不器用で、直そうとして無理に引っ張り余計に壊してくれたのは彼である。

「…十代目が言うんじゃ、仕方ねえな」
 そういうと思ったよ。
 獄寺は今までつけたままだったイヤフォンをとり、うさぎちゃんをいじりはじめた。…なんか変な表現だな、今の。
「ったく。どうしたらこうなんだよ、もっと物を大切にしろ」
「…獄寺がそんなこというなんて意外?」
「うるせー」




 かちゃかちゃ。
 どれくらいいじってただろうか。だが、獄寺ははあ、とため息をついて手を止めた。
「ちょっと、ちゃんと直してよ」
「めんどくせえ。…っつーか、野球バカからもらったもんをいつまでも使ってんなよ」
「よく覚えてんね」
 そう。このうさぎちゃんは山本から誕生日にもらったものだ。だからといって、別に山本と特別な関係であるとか、そういうことはない。綱吉からもプレゼントはもらったし、獄寺はほらよ、とシャーペンを一本くれた(彼に似合わず、とても可愛らしいものだったのにびっくりして。でも私はそれがとても嬉しかった)。


 なんて、そんなことをぼんやりと考えていたら、座っていた獄寺が「」と突然立ち上がった。
「行くぞ」
「…は? 行くって、どこへ」
「バカか、買い物に決まってんだろ。仕方ねーから、…買ってやるよ」
 そう言うなり、獄寺はスタスタと先に歩いて行く。え、意味がわかんないし。
「ってかさっきあんた、物を大切にしろっつったじゃん。矛盾してるし」
「それとこれとは別だ。…大体、俺がやったもんをあいつからのもらったペンケースに入れられるのが不愉快なんだよ」






     器用なのに素直じゃない