ガラガラ。
 教室の扉を開けると、橙色の夕焼けに開いたままの大きなカーテン、そして机の上で突っ伏しているの姿があった。
「おい」
「…」
「ったく、何やってんだよ」
「…別に」
「先に帰っちまったぞ」
「誰が」
「…山本」
「……。あんたこそ、綱吉と帰らないの」
「てめえが遅えから、呼びに来たんだよ」
 本当は、違う。
 いつものように帰ろうとして、十代目と二人でのことを待っていたのは確かだ。けれど、その少し前にとすれ違ったときの顔が、今にも泣き出しそうだったのがどうも気がかりで。十代目には先に帰っていただいた。…山本は、既に先に帰ってしまっている。

「あんたも」
「あ?」
「あんたも、先に帰ってていいよ」
「俺はまだここでやることがあんだよ」
「携帯いじってるだけのくせに」
「うるせーな」
「ねえ、お願いだから」

 一人にして。



 

 ガンッ!
「いい加減にしろよ!!」
 の一言に、俺はとうとう怒りを抑えきれなくなった。勢いで足元にあった椅子を蹴り倒すと、静かすぎる教室に大きな音が響いた。
 俺の怒鳴り声に、はびくっと身体を震わせる。
「いつもいつも一人でうだうだ悩みやがって、馬鹿なことしてんじゃねえよ!」
「ば、ばかって…獄寺には何の関係もないじゃない!」
「てめえを見てるとこっちがイライラすんだよ!」
「…そんな風に言われたって知らないよ! 大体、あたしが山本のことをどう思おうが勝手でしょ!」
「…っ!!」



 気がつくと、俺はの腕を強く掴んでいた。手が小刻みに震える。俺の手か、のものか。ぎりぎりと音がする。
「は、離してよ、痛い」
「なんだよ、ちゃんと言えんだろ! だったらそうやって痛いなら痛いって言えよ。泣きたいなら泣きたいってはっきり言えよ!! どうしてそんなに、そんなに俺は」
 俺は、頼りないか?
 そう言いかけて、はっとして口をつぐんだ。何を言ってるんだ俺は。一体、俺とこいつがどんな関係だっていうんだ。こいつにとって俺はきっと、ただの…ただの友達じゃないか。
 すると、急激に頭が冷えてきて、そのまま俺は自己嫌悪に陥った。


「…わりぃ」
 けれど、は震えていてついには泣きだしてしまった。
「あ、あたしだって、あの子と山本が一緒にいるとこなんて、見たくなかったよ。こんな、こんな、か、叶わない恋なんて望んでなかったよ」
 しゃっくりをあげながら、途切れ途切れにはこぼしていた。俺はふと、こいつを強く抱きしめたくなって腕を伸ばす。が、それは届かなかった。だって、を泣かせたのは他でもない俺なのだから。
 どんな形であれ、俺を頼ってほしいと。そう願っていたにも関わらず何もなす術も持たない俺は、所詮ただ黙って彼女の頬を伝う涙を、じっと見つめているだけの男にすぎなかったのだ。








     絆創膏だけじゃは治せない


   (山本に片想いのヒロインと、ヒロインに片想いの獄寺)