私は生来、他の人々が見ることの出来ないものが見えるそうです。曖昧になってしまうのは、私自身何が皆と同じで何が違うのかはっきりとした区別をする確信が持てていないからです。小さい頃、私には一人の女の子の友達がいました。私が一人で広場に行くと決まってその子がいて、私たちは二人で夕方まで遊んでいたのですが、その様子を傍から見ていた他の子達は皆口をそろえて、気持ちが悪いと一言だけ言って去っていくのでした。その時はどうしてそう言われるのかさっぱり見当がついていなかったのだけれど、その子と二人で遊んでいる時に偶然幼馴染のブラッドに会い、気づきました。「ローラ、一人で何して遊んでいるんだ」と。私の隣には、確かに女の子がいたのに。でもその子はブラッドの言っていることの意味が分かったのか、「ごめんね、ローラ」とだけ言って消えてしまったのです。それから私は、走って家に帰り母親に抱きついて泣きました。すると母親は少し困って、そして微笑んで言いました。「その子はきっと一人で寂しかったんでしょう。だからあなたは、その友達がもう寂しい思いをしないように、女神様に祈ってお願いなさい」そうして私は母親の言う通り、迷える死者の魂が救われるように、教会でお祈りを続けてきました。
戦場はいつも、嘆きや逃げ場の無い苦しみが蠢いていて、それを感じる度に私はどうにも気分が悪くて仕方がなくなってしまうのです。今日も例に漏れずそうで、とうとう立っていられずに地面に座り込んでいると「ローラ、大丈夫?」杖を持ったが声をかけてくれました。「疲れたなら休んでて。私が代わりにやるから」優しく微笑んで、激しい争いの場に行こうとする彼女の背中を、ぼうっと眺めていました。
彼女の後ろには、いつも一人の少年がいました。その少年はと同じ髪の色をしていて面影があり、常にの傍に寄り添うようにして立っていたので、恐らく身内か、そうでなくともとても大切な人物であることは見ているだけでわかりました。なのに今日は、の傍に少年はいませんでした。傍に立っていたのはその少年ではなく、金色の髪をしたレオナルドでした。
私はいなくなってしまった少年のことが気になって、辺りをぐるぐる見回していました。たくさんの人が忙しなく動いているその間を探していると、ようやく離れたところに一人でぽつんと、彼は立っていたのです。
「あなたは、何をしているのですか」
話しかけてみると、少年は驚いた顔をして振り返りました。けれど彼は私の顔を見ると、また視線を戻して人々の争いを眺めていました。その視線の先にはやっぱりがいたのですが、彼はその後に彼女の傍で戦うレオナルドを見ていました。
「今日は、の傍にいないのですね」
少年は再び振り向きました。「あんた、俺のこと見えるんだな」そして、今度はこの青い空を見上げていました。
「はい」
「あんたは俺が見えるけど、俺の姉ちゃんは俺が見えないんだ」
「はい」
「姉ちゃんは知らないんだ。俺がここにいること。だから、ずっと俺を探している」
少年はによく似ていました。面影も、その寂しげな顔も。と同じ色をした少年の瞳は確かに彼女を見ているはずなのに、その視線にもそれに込められた想いさえも、に届く事はないのでしょう。
「俺はずっと姉ちゃんの傍にいた。そしてこれからも一緒にいる。だからもう探さなくて良いんだ。もう俺で苦しまなくて良いんだよ、姉ちゃん」
そうして、少年はとうとう見えなくなってしまいました。その代わりに少年の立っていた場所には鎖の切れた首飾り―――ロケットが落ちていて、私がそれを拾ってロケットを開くと、中には少年とがいてとても幸せそうに私に笑いかけていました。
戦いが終わって、無事に帰ってきたに私はこのロケットを渡し、少年の想いを彼の代わりに伝えました。話を終えた時は泣きそうなのを必死に堪えていて、それでも私に微笑んで言ったのでした。「ありがとう、ローラ」
そのの手のひらには彼女の大切なロケットが握られていました。そして、その隣にはきっと彼女の大切な弟が寄り添っているのでしょう。
キャンパス
に落ちた
色