「スクアーロの髪って、きれいだよね」
「あら〜、どうしたの? 急に」
 ヴァリアーという暗殺部隊に所属している私は、今日の任務を終えてルッスーリアと共に一息ついていた。
 二人で優雅に紅茶を飲んでいたところ、その横をスクアーロが通り過ぎたのだった。彼もまた任務から帰ってきたばかりらしく、忙しそうにしていたので、きっとボスへ報告書を出しにいくところなのだろう。
「女の私よりもすっごくきれい。悔しいけど」
「そうねえ…、まあアレはヴァリアークオリティだから」
「…みんな、上手く説明できないところをすぐそうやって誤魔化すんだから」
 それでも、あれだけきれいな髪を保つのだから、普通の人間が真似出来ない技術を彼は持っているのだろう。それこそ、普段使っているシャンプーなどが特別良いものだというだけでは駄目なのかもしれない。


「う゛ぉおおおい、二人で何やってんだぁ」
 長い銀髪をさらさらと踊らせながら、スクアーロがやってきた。
「ねえスクアーロ、今度私の髪を洗ってくれない?」
「はぁ? 何を話してたかは知らねえが、俺はてめえの召し使いじゃねえぞぉ」
「えー! いいじゃない! 一回くらい洗ってよ」
 それに、そんなスゴイ(女の子にとって)嬉しいヴァリアークオリティを独り占めするなんてずるいよ!
 なんて二人で言い争っていると、「ぎゃーぎゃーうるせえよお前ら」とどこからかベルフェゴールがひょいとやってきて、テーブルに置いてあった私のティーカップに口をつけた。
「うえ、まずい。冷めてんじゃん」
「ちょっとベル、何勝手に飲んでるの!」
「っていうかさ」
 私が怒ってもベルフェゴールはニヤニヤと笑みを浮かべたままだった。
 そして彼はスクアーロをちらりと見たかと思うと、すぐに私の方に向いて、言った。



さ、そんなにスクアーロと風呂に入りたいわけ?」


 辺りがしぃんと静まりかえった。
 ただ、今まで傍観していたルッスーリアが小声で「ベルちゃんたら! 乙女にそんなこと言わないの」とベルフェゴールを制していたが。
「ち、ちがうよ! そんなこと誰も言ってないじゃない!」
「うしし。だってそういうことだろ? あーってば、いやらしい」
「おい馬鹿王子! それ以上何か言ったらたたっ切るぞぉ!」
「そんなこと言っちゃってー。スクアーロだって期待してたくせに」
「…こっんのおおお!!」


 その後、スクアーロとベルフェゴールのそれはとてもとても激しい追いかけっこは、たまたま通りかかったボスが一喝するまで終わらなかった。
 私はというと、それから何日かの間スクアーロと顔を合わせるだけで赤面してしまい、その度にごめんね!と叫んでその場から逃げ出してしまうのであった。


「あーあ、愛しのあの子に嫌われちゃったねえ。ししっ」
「っ!! …なんで俺が嫌われなきゃなんねえんだ、元はと言えば全部お前の所為だろうがぁ!!」




     (…あまりにも平和すぎる)